研究課題/領域番号 |
10671792
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松家 洋子 九州大学, 歯学部, 助手 (50128097)
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研究分担者 |
畦森 雅子 九州大学, 歯学部, 助手 (90136490)
赤峰 昭文 九州大学, 歯学部, 教授 (00117053)
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キーワード | リン酸4カルシウム / ポリメチルビニルエーテルマレイン酸 / ポリアクリル酸 / セメント / ハイドロキシアパタイト / α-リン酸3カルシウム / 初期溶解性 / 耐久性 |
研究概要 |
歯牙の保存治療における裏層剤あるいは根管充填材としての応用を目的として、筆者らはポリメチルビニルエーテルマレイン酸(PMVE-Ma)水溶液とリン酸4カルシウム(4CP)からなるセメントを試作した。4CPの微粉末を使用すると、本セメント硬化体は最終的に高分子のマトリックスがハイドロキシアパタイト(HAp)の結晶を取り囲む人工象牙質とも言える構造をとる。本研究の目的はこのリン酸4カルシウム-PMVE-Maセメントの溶解性と耐久性をやはり試作のリン酸4カルシウム-ポリアクリル酸セメントおよび市販のα-リン酸3カルシウム(TCP)セメントと比較検討することである。 粉砕時間の異なる4CP粉末を用いてPMVE-Maセメントを調整し、約半年間水中に浸漬して圧縮強度の変化を調べた。その結果、長時間粉砕した微粉末を使ったセメントは、粗い粉末を使ったセメントの約二倍の初期強度(1日後)を示し、7日後から硬化体内にHApを生成した。しかし、HApの生成は強度の低下もまねくように思われた。HApの生成が認められないセメントでは上記の実験期間に置いては強度の低下は検出できなかった。さらに、PVE-Ma水溶液と練和してHAp生成セメントが得られる4CPの微粉末をポリアクリル酸と練和したが、得られたセメントは硬化体内にHApを生成しなかった。しかし強度の低下も示さなかった。また、市販のα-TCPセメントとしては、三金社製ニューアパタイトライナータイプIIおよび大坂セメント社製ビタセメンについて試験を行った。三金社製ニューアパタイトライナータイプIIは約半年間の水中浸漬では強度の低下を示さなかったが、大坂セメント社製ビタセメンは28日後で約70%に低下した。使用した両市販セメントにおいてはHApの生成は認められなかった。 試作セメントの初期溶解性は、カルシウムイオンの溶出量の測定結果によると、いずれも市販セメントに比べて低いように思われた。初期溶解性については次年度にさらに検討を行う予定である。
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