研究概要 |
平坦にした牛歯唇面にダイアモンドポイント(テーパー2/10)を用いてI級規格窩洞(径3.8mm、深さ2mm)を形成し、窩洞径を測定顕微鏡により測定した。窩洞と同一のテーパーを有し、径の異なる数個の金型を用いて蝋型を作製し、金パラジウム合金によりI級インレーを調製した。サンドブラスト後、インレー体の頭径を窩洞の場合と同様に測定し、窩洞との寸法差をセメント被膜厚さとした。準備されたセメント被膜厚さは、数十μmから四OOμmの範囲であった。コンポジットタイプ、MMAタイプのレジン系およびレジン含有グラスアイオノマー系の三種のセメントを用い、指示書に従って接着操作を行った。水中一日保管後、辺縁部の仕上げを行い、4〜60℃のサーマルストレスを千回ないしは一万回負荷した。ついで、色素液に一日浸漬し辺縁漏洩を明示した後、引っ張り試験を行った。その後、歯牙を四分割し、切断面に明示された色素侵入の長さを、実態頭微鏡下で判定した。 その結果、次の知見が得られた。 三種のセメントとも、被膜厚さの差異の保持力ならびに辺縁漏洩に及ぼす影響はほとんど認められなかった。しかし、熱刺激の負荷回数の増加に伴って、辺縁漏洩は増大したが、保持力はほとんど影響を受けなかった。 なお、保持力と辺縁漏洩との関連については,MMAタイプのセメントにおいて、保持力の増加に伴って辺縁漏洩も減少する傾向が認められたが、他の二種のセメントではかような傾向は認められなかった。
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