研究概要 |
近年、dentin bonding systemの象牙質への接着強さはエナメル質の場合に匹敵するほど向上してきた。我々は佐野が紹介したmicrotensile test法をベースとして、同じ歯からより多くの試験片が採取できるnon-trimming microtensile test法を考案した。この方法を用いると同一歯であるにもかかわらず、狭い範囲での被着面の接着強さが把握できるようになった。平成11年度にこの新しい方法を用いて、市販ボンディングシステムの接着面積1mm^2の角柱状試験片の耐久性を測定したところ、製品によって水中保存15カ月後の接着強さの低下しないことが判った。平成12年度は引き続き長期保存試料の測定と共に、う蝕罹患歯との接着強さの解析を、研究の重点に加え、平成12年度の実験結果は下記の通り: 1)当初の予想に反して、水中保存24カ月後の試験片は接着界面よりも象牙質自体が水の侵襲によって、引張接着試験中に象牙質内の凝集破壊がほとんどで、界面接着強さの結果が得られなかった。このことから、接着の劣化を観察するのに、単なる試験片をひたすら水中に保存するではなっく、サーマルサイクリング装置による劣化の観察が必要と示唆された。 2)さらに、ウエットボンディングシステムおよびセルフエッチングプライマーシステムの2種類のボンディングシステムを用いて、従来の引張り試験法とこの新しい考案された方法の接着強さおよび破断面の相違を検討した(第19回日本接着歯学会学術大会、東京,2000)。その結果、従来の試験方法では両システムとも類似した象牙質内の凝集破壊像が多く観察されたとともに、接着強さに有意差を示さなかった。一方、新しい考案された方法(non-trimming microtensile test)では接着界面破壊が多く観察され、接着強さも両システム間に有意差が観察された。さらに、軟化象牙質、硬化象牙質及び健全象牙質など同一歯に存在している異なる性状を持つ象牙質との接着強さのデーターも数多く得られ(IADR,Washington DC,2000)、ボンディングシステムの各種象牙質との接着メカニズムの解明に、non-trimming microtensile testは有用な方法であることが明確になってきた。
|