研究概要 |
手術用顕微鏡を用い根尖切除術を行う場合、回転切削器具を用いるとそのヘッド部分が大きく術野の妨げになる。しかしファイバーなどを導光系に用いるレーザーは、その可能性が少ないと思われる。またEr : YAGレーザー・Er, Cr : YSGGレーザーは、歯の切削効率も比較的良く、術野周囲の隣接組織への熱障害も少なく、根尖切除術への応用が期待される。 Er : YAGレーザーで抜去歯の根尖切除を行ったSEM所見では、熱による溶解や炭化を示す所見は認められなかった。しかしEr, Cr : YSGGレーザーではファイバーチップ先端が、切断に比較的長時間接触していたと思われる部位に若干の炭化が認められた。この傾向は使用期間が長期に渡る古いファイバーチップに認められたが、新しいものには認められなかった。Er : YAGレーザー・Er, Cr : YSGGGレーザーとも根尖切除によるdebrisやスメア層の発生は認められなかった。さらに根管充填してあった根充材と根管壁の問にレーザー照射により新たに生じた間隙も認められなかった。一方、根尖切除によって露出した象牙質切断面には、レーザー照射による象牙細管の閉鎖は認められなかった。Er : YAGレーザー・Er, Cr : YSGGレーザーによる歯根端切除にかかる時間は、回転切削器具(電気エンジン)よりも長い時間を必要としたが、Er : YAGレーザーとEr, Cr : YSGGレーザーの問には、さほど差は認められなかった。また照射出力と切削時間の間には相関があまり認められなかった。今後、レーザーチップ先端部の末端出力および照射方向を含めたさらなる詳細な照射条件を検索する必要性がある。
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