研究概要 |
1.病理学的研究 Er:YAGレーザーによる露髄直後の歯髄損傷を検討するため,成犬歯牙を用いて平成10年度におこなった実験と同様の術式で露髄面を作製し病理組織学的に評価した.Er:YAGレーザーを用いた場合,歯髄組織の一部に実質欠損が生じるものの露髄面に炭化層や凝固壊死層は観察されず,炎症性変化は対照と同程度であった.また,Er:YAGレーザーによって形成された窩洞に対する修復材料の適合性を検索するため,窩洞に2種のグラスアイオノマーセメントを充填し病理組織学的に評価した結果,その安全性が示唆された. 2.理工学的研究 Er:YAGレーザー照射象牙質に対する市販コンポジットレジンシステムの接着は非照射象牙質に比べ小さいことが報告されている.この理由はレーザー照射により酸抵抗性が得られたためであろうとの推察がなされているが,我々はレーザー照射象牙質をpH4.0乳酸緩衝液中に24時間浸漬し,溶出CaおよびP量を推定したところ,非照射象牙質との間に有意差は認められなかった.Er:YAGレーザーを照射したウシ象牙質に対して各種酸処理材を応用後,4-META/MMA-TBB系レジンを用いてPMMA製ロッドを接着させた.ここから接着面積6mm^2のダンベル型接着試料を作製し,引張接着強さを測定した.その結果,酸処理がレーザー照射象牙質へのレジン接着に及ぼす影響はレーザー非照射象牙質においてみられる特徴とは異なっており,またレーザー照射象牙質においては酸処理を施さない群が最も高い接着強さを示した.一般に,接着界面に認められる樹脂含浸層は2〜5μmであることは知られているが,レーザー照射面におけるレジンの浸透は50〜80μmの深さにまで及んでいることが走査電子顕微鏡による観察が明らかになった.現在,レーザー照射象牙質への接着減弱の原因を明らかにすべく研究を継続している.
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