研究概要 |
近年、歯科臨床に低出力レーザー照射による創傷、炎症の治癒促進などに応用されている。これを不可逆性の炎症経過をたどる歯髄炎に応用し、歯髄保存療法の確立をはかることを目的として、昨年度、レーザー照射による歯髄培養細胞の炎症性サイトカイン産生に対する影響について検討した。その結果、Porphiromonas endodontalisから抽出したLPSを培養液に添加し、その培養細胞に5ないし、10分間レーザー照射を行なうと、歯髄培養細胞のIL-1βおよびIL-6の産生量が約半減し、さらにIL-1βおよびIL-6の遺伝子発現レベルで観察したところ、5分照射群および10分照射群において、レーザー非照射群に比較して、IL-1β,IL-6ともにmRNAの発現が減少した。レーザー照射により、培養細胞レベルでP.e.LPSによる歯髄培養細胞に対するIL-1βおよびIL-6の産生を抑制し、炎症の進展に影響を与えていることが示唆した。そこで、今年度、その現象がin vivoで起きるかどうかを検討するためにラット臼歯に露髄させ、人工的に歯髄炎を惹起させ、その直後にレーザー照射を行い、2日後に顎骨から歯牙を取り出し固定、脱灰後にパラフィン抱埋を行い切片を作成しHE染色を施し、光学顕微鏡で観察した。一方歯牙から歯髄を取り出し、RT-PCR法で遺伝子発現の観察を行った。光学剣舞強の観察では、両者の群でも多くの細胞浸潤が診られ、差は認められず、また、遺伝子発現でも細胞培養レベルで認められたIL-1βおよびIL-6の顕著な差は認められなかった。刺激の強さが、強度すぎるのか。照射条件が不良であるのか現在検討中である。
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