研究概要 |
平成10年度研究では、病理組織学ならびに生化学的手法を用いて、ペーストタイプ次亜塩素酸ナトリウム剤の口腔粘膜に対する組織刺激性を評価した。 Wister系ラット(7週齢)の下顎口腔前庭粘膜に、ペーストタイプ10%次亜塩素酸ナトリウム剤あるいは10%次亜塩素酸ナトリウム溶液を4mm×4mmの範囲で30分間作用させ、経時的に作用部位粘膜部を摘出した。この試料に対し、1)作用部位粘膜の病理組織学的検索、2)作用部位粘膜におけるヒスタミン量の測定を行った。 1) 作用部位粘膜の病理組織学的検索:作用終了から1,24,48時間後に作用部位粘膜を摘出した。ホルマリン固定後、通法によりヘマトキシリン・エオジン染色を施し、実体顕微鏡下で観察を行った。ペースト作用群と液作用群を比較したところ、両群とも作用後1時間で、粘膜固有層の露出、空胞化、肥厚化が認められ、この所見は48時間にも同様に観察された。また好中球を中心とした炎症性細胞浸潤、血管の拡張が経時的に進展していく傾向が認められたが、両群間の組織変化に明らかな差異は認められなかった。 2) 作用部位粘膜におけるヒスタミン量の測定:作用終了から1,24,48時間後に試料を摘出した。4℃下で試料をホモジナイズ後、Shoreらの方法によりヒスタミンを抽出し、蛍光法で定量を行った。ペースト群の作用後1時間で、粘膜部のヒスタミン量は29.01ng/mgを示したが、24時間では18.62ng/mg、48時間では5.76ng/mgと、時間の経過とともに減少していく傾向が認められた。また液剤についても同様の傾向がみられた。 30分の作用時間にも関わらず、両剤の組織侵襲は当初の推測よりも低い状態にとどまった。またペースト剤の組織浸透性ならびに、組織刺激性は、液剤とほぼ同程度であった。 平成11年度は、歯髄組織に対する組織刺激性について、比較検討していく予定である。
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