本研究の目的は、優れた処理効果と耐水耐久性をもつシランカップリング剤を開発することである。前回は、3-MPSにポリ(フルオロ)アルキル基をもつフッ素系シランを混合したカップリング剤で改質したガラス面に対するコンポジットレジンの接着強さは、3-MPS単独に比べ高い値を示した。特に、ポリ(フルオロ)アルキル基をもつ鎖長の短いものでは約20〜40%、鎖長の長いものでは約5%の濃度でピークが認められた。 今回は、処理面の表面自由エネルギーならびにレジンモノマーに対するぬれを接触角計を用いて測定しフルオロアルキルシラン添加による接着強さおよび耐久耐水性の向上を要因を解析し、また、各シラン剤のメトキシ基の加水分解反応性の差をHPLCを用いて加水分解反応性を測定した。各シランとも同様に加水分解し、縮合することから、各シランは相互に架橋したシロキサン多分子層を形成すると考えられる。また、混合シラン処理ガラス面の表面自由エネルギーの結果から、疎水性シランの特定な混合比、すなわちポリ(フルオロ)アルキル基をもつシランの鎖長が短いものは20〜40%、鎖長が長いものでは約5%の濃度で表面自由エネルギーのピークが認められ、ポリ(フルオロ)アルキル基の鎖長の違いにより、特定な混合比で接着強さにピークをもつという前述の結果とほぼ一致した。また、レジンモノマーの処理ガラス面に対する摂触角は、ポリ(フルオロ)アルキル基をもつシランの鎖長が短いものは20〜40%、鎖長が長いものでは約5%の濃度で接触角の低下つまり、ぬれの向上が認められ、表面自由エネルギーと同様に特定な混合比で接着強さのピークと一致するという結果であった。
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