研究概要 |
我々はLaにう蝕予防効果のあることを始めて報告(口腔衛生会誌,28:10-16,1979)して以来、その効果のメカニズムを明らかにし、より効果的な臨床応用を目指した実験を続けている。今までにランタノイド(Ln)にはグルコシルトランスフェラーゼ阻害や細菌の凝集沈殿効果などによりう蝕細菌のガラス管壁への付着阻害を介したう蝕予防効果のあることを明らかにしてきた。今回、Ln処理したヒドロキシアパタイト(HA)は耐酸性が高まり酸脱灰が低下していることを発見したので、その至適条件等を明確にした。その結果は、(1)Ln塩の種類により脱灰阻止効果が異なった-塩化物ではLa,Ho,Ybが、硝酸塩ではPr,Smが、そして酢酸塩ではいずれも良い効果を得たがLa,Ce,Prなどで特に脱灰阻害効果が上昇した。(2)HAが粉体状のものでも直径5mmの球状のものでも効果に有意差は認められない。(3)効果の高かったCe,Ho,Ybの酢酸塩溶液のpHの影響を調べると、pH5.5が至適pHであった。(4)Ln溶液の濃度は高い程効果は高いが、臨床応用されている2%NaFと比べて、同濃度ではLn溶液の方が脱灰阻止能が高かった。(5)処理時間2分で効果はほぼプラトーに達した。(6)Ln溶液の保存液の安定性を1,2,3,4週、及び6ヶ月間、各月に調べたが、効果の低下は認められなかった。(7)HAの純度が効果に影響していた。これはNaFでも同じ傾向であった。HAの化学分析値やX線回折による純度判定で純度の低いものほど効果が低下していた。(8)ヒトの歯牙粉末でもX線回折結果により、より純HAに近い検体程高い効果を示し、純度の低いもの程脱灰阻止能は低下した。(9)コラーゲンへの付着やコラーゲン含有量の脱灰阻止能への影響を調べたが有意な差は得られなかった。以上の結果は現在論文投稿準備中である。なお、HAの結晶性とLnやFの置換については各種のHAを焼成し、そのX線回折と耐酸性実験を行っている。
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