本研究は50〜60cmのウシ胎児下顎骨由来初代培養骨芽細胞を用い、顆粒状の生体材料表面における石灰化を検索するものである。生きた状態もしくはそれに近い状態でのウシ胎児の入手が困難で、したがって細胞を確保することがまず第1である。しかしながら、現在までのところ、米国イリノイ州の研究者より供給される予定の細胞が使用できず、国内での入手を中心に考えているが、当初予想された通りその入手が困難で、実験回数に限りがある。具体的には現在までに数回、細胞を入手して多孔質アパタイト顆粒を用いて実験した結果、当初の予想通りアパタイト顆粒表面での石灰化が起こることが確認されている。ただし、光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察に関しては、細胞の固定方法、薄切方法に問題があり、現在のところこれらに関する検討を重ねている状況である。また、RT/PCR法による各種サイトカイン発現の検索に関しても、現在進行中で、明らかな結果は未だ得られていない。今後、入手に不確定要素があるウシ胎児下顎骨の細胞だけではなく、他の比較的大型の動物胎児や、商業的に入手可能で、石灰化能を有する細胞の使用も検討するつもりである。この実験により、顆粒状生体材料の間で起こる立体的な石灰化の様子が詳しく分析できれば、従来in vivoでしか観察し得なかった立体的な骨形成のモデルが、より理想に近い形で得られることになる。今後1年間に、より効率的に実験を行い、結果の分析を正確に行う予定である。
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