研究概要 |
食に関わる唾液と味、補綴物による咀嚼機能の回復の関連について追及することを目的として有歯顎者および義歯装着者の診査した。部分床義歯装着者45名では食物や味の好みが義歯装着で変わったものが約半数あり、義歯の満足度や慣れと味覚の関連が見られた。そこで、義歯の満足度が7以上、咀嚼能率が平均87.3の12名(以下PD群、平均年齢63.2歳)について唾液の流出量や緩衝能、味覚閾値について検討した。 A. 唾液流出量:安静時はPD群は1.58+0.33ml/5minでコントロールに比べ有意に少なく、パラフィンペレットの咀嚼による刺激時はPD群で少ない傾向はあるが、有意差はなかった。この事から、唾液分泌が加齢により減少している高齢者でも、義歯に満足し咀嚼機能が回復している場合には咀嚼時には十分な唾液の流出が期待できることが推測された。本人の口腔乾燥感と安静時唾液量より刺激時唾液量との関係が示唆された。現在、新義歯を製作している患者について義歯製作前後、装着後に経時的に同様の検査を行い、唾液の流出量や緩衝能の変化を調べているところである。 B. 味覚閾値測定:4基本味(甘,塩,酸,苦)の認知閾値は、咀嚼刺激時唾液分泌速度が6.0ml/5min以上の者に比べ、2.5ml/5min以下の者は 甘み、塩味、酸味、苦みいずれにおいても閾値が高い傾向を示し、唾液が多いほうが味を認識しやすいことがうかがわれました。さらに唾液量やPHとの関連について検討する予定である。 C. 床義歯との関連(残存歯による咬合支持の有無について):咀嚼刺激唾液の少ない者(<2.5ml/5min)は、多いもの(>6.0ml/5min)にくらべ、咬合支持が少ない、あるいは片側に偏っており、咬合状態や咀嚼状況と唾液分泌の関係が示唆された。また味覚感受性は後者が高い傾向を示した。 これら義歯装着者との比較をするため同年齢の有歯顎の被験者のデータを集めているところである。
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