研究概要 |
平成11年度の研究では10年度に引き続き,貴金属合金,プライマー,接着剤,前装材料を使用して,以下の各項目について実験を行った. 被着体として7種の金銀パラジウム合金,タイプIV金合金,陶材焼付用金合金,陶材焼付用パラジウム合金,銀合金などを用いて,合金組成が接着耐久性に及ぼす影響を検討した.その結果,金銀パラジウム合金については,有機硫黄化合物を含むプライマーを使用した場合,銅の含有量が高いほど接着耐久性も高い傾向を示した.異種合金間の比較では金銀パラジウム合金,タイプIV金合金など,銅を含有し,かつ硬化熱処理が可能な合金が高い接着強さを示した.一方,陶材焼付用合金は接着耐久性に劣っていた.銀合金は耐久試験中に金属の腐食に基因すると思われる変色が生じ,接着耐久性も劣っていた. 接着剤の組成が異なる試料を作製し,耐久性を検討した.組成の異なる4種類のプライマーおよび2種の前装用コンポジットを使用して,金銀パラジウム合金に対する接着試験を行った.その結果,チオウラシル系,トリアジンジチオン系,チオリン酸系プライマーが有効であることが明らかになった.また,トリアジンジチオン系モノマーをリン酸エステルモノマーと併用すると,単独で使用した場合に比して,処理効果が増強されることが明らかになった. 良好な成績を示した試料についてエックス線光電子分光分析装置を用いて接着界面を分析した.その結果,有機硫黄化合物のチオキソ基やメルカプト基に由来する硫黄が貴金属元素パラジウムなどと結合していることを明らかにした.
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