研究概要 |
説明と同意を得た健常者24名、TMD患者2名、脳梗塞患者1名の咬筋に機械刺激、経頭蓋磁気刺激、末梢電気刺激によってT,C,M,H波を誘発した。健常者の安静時T波の平均(1S.D.)潜時、持続、振幅、面積値の各値は、7.35(0.61)ms、8.55(1.39)ms、0.21(0.09)mV、0.37(0.20)mVmsで、同じく安静時C波では、9.87(1.63)ms、23.3(3.11)ms、0.09(0.05)mV、0.44(0.24)mVms、最大開口中のC波では、7.88(1.23)ms、29.4(3.60)ms、0.25(0.17)mV、1.26(0.91)mVmsであった。C波は咬合時や開口時に同側性にも誘発可能で、同側系路の診断を可能とした。末梢電気刺激による2波形は、その潜時、応答様式、高頻度2連刺激結果からM波とH波であると同定された。電気あるいは磁気刺激後に検出される抑制相を電気-磁気、磁気-電気2連刺激を用いて検討した。前者では、C波は抑制されたが、後者では、H波を抑制しなかった。よって、条件刺激によって誘発されている抑制相は、M波やC波誘発後の不応期だけでなく、両側性の皮膚表在性感覚(抑制性)、皮質下行性斉射の停止(脱促通)の関与も想定された。機械・磁気同時刺激による両側T波の抑制には、M波出現による筋トーヌス上昇、モーターユニットの不応期、皮質抑制の機構が想定された。片側性顎関節症症例では、T波:振幅低下、C波:開口時振幅増大、患側潜時遅延、の所見から筋紡錘の安静時感度低下と開口時の高頻度発火、皮質-核路の伝導障害を予想した。他例では、H波が安静時でも得られたが、T波の誘発が困難であった事から、筋紡錘の安静時感度低下が示唆された。左側脳梗塞患者では、咬筋の異常所見を認めなかったが、第1背側骨間筋C波の解析(右脳の弱い刺激で右側のみにC波が誘発)から同側経路が賦活した可能性が示された。
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