前報までの観察により、高齢総義歯装着群と青年有歯顎群ではその運動調節のストラテジーに違いがあることが類推されている。今回、これらの違いがagingによるものかどうかを確認する為、高齢有歯顎群(平均年齢71.6歳(65〜79歳)の7人(女性2名、男性5名))に対し、ad-lib、0.3Hz定頻度音信号負荷、1.3Hz定頻度音信号負荷下顎タッピング運動時のMKG vertical、咬筋表面筋電図、音司令信号、および運動の状況変化をよく反映すると考えられる加速度の観察を行い、以下のような結果を得た。1.高齢有歯顎群では、青年有歯顎群・高齢無歯顎群に比較し、一部パラメーターの0.3Hzについて(音信号負荷時点〜Mm burst onset、音信号負荷時点〜歯牙接触時点間時間差)のみ、個人差、試行回数によるバラツキが特に大きい傾向がみられた。2.ad-libのタッピング周期は高齢有歯顎群696msec(高齢総義歯装着群975msec、有歯顎青年群691msec)であった。3.音信号終了後の無信号過剰タッピングを1回行なったのは高齢無歯顎と高齢有歯顎群で1.3Hz(6名)、0.3Hz(1名)、青年有歯顎群で9名、4名であった。4.衝撃加速度の大きさでは、0.3Hz定頻度の(Y軸)上下方向で、他条件より試行の経過に伴う変化が観察できる傾向にあった。5.以上より高齢有歯顎群では、その運動調節において、総義歯装着群・青年有歯顎群とはフィードバック調節、フィードフォワード調節の割合が違っており、その観察は、比較的困難な課題の0.3Hz音信号負荷下顎タッピング運動時に、また衝撃加速度の大きさでよく観察されることが示された。
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