研究概要 |
金属アレルギーを発症させる歯科用金属の変化を口腔内をシュミレートした浸漬試験を用いて調べた. 前年度に実験に用いた歯科用金属は,生体親和性の高いと言われている純チタンである.その結果と比較するために今年度は,保険診療で使用される頻度の多い銀合金を用いた.実験条件は前回と同様にし,生理食塩水および口腔内の唾液やプラーク中に含まれている有機酸(乳酸,ぎ酸,酢酸)溶液中に浸漬して,その成分元素の溶出,試料重量の変化および変色を観察し,純チタンと比較検討を行った.その結果,銀合金では,すべての溶液において金属成分の溶出が確認された.しかし,金属の溶出は溶液毎にその割合が異なっていた.また,他の金属では観察されなかった腐食生成物によると思われる不溶性沈澱物が観察された.このため,試料重量の減少が有意の大きくなっていた.色の変化においては,肉眼で明らかな変色がすべての試料で確認でき,また,色差測定でも,すべての溶液の浸漬後の試料において,"別の色系統になる"に相当する変色であった. 以上から,銀合金は口腔内で純チタンより腐食抵抗が大きいことを確認できた.さらに,口腔内の唾液やプラークの性状および食生活により口腔内の金属は金属によって異なる影響を受けることが予測できた.しかし,今年度に得られた結果は,口腔内のほんの一部をシュミレートしただけであるので更なる検討が必要なため,さらに他の金属や浸漬液を変える追加実験を計画すると共にデータは分析中である. 一方で,これと同時に,金属アレルギー患者の口腔内の緩衝能をサリバテストやpH試験紙を用いて、健常者との差がないかどうかを調査している.
|