研究概要 |
平成10年度は新生児ラットから分離した破骨細胞を表面粗さの異なる牛骨片上で培養し,表面性状が粗であれば破骨細胞の骨吸収能を増大させることが示され,骨芽細胞が骨吸収能の増大に関与していることが推測された.平成11年度は異なる生体材料の表面粗さが破骨細胞の挙動にどのように影響を及ぼすか観察し,骨芽細胞との関係を調べた. 培養試料には牛大腿骨より採取した牛骨片を対象とし,高純度純チタン(99.95%),ハイドロキシアパタイト(京セラ社製)を薄切したものを用いた.表面処理は薄切した面を滑面とした.粗さの付与は400番の耐水研磨紙を用いて凹凸を付与し,粗面とした. 各試料に新生児ラットより得た破骨細胞をのせ,3日間培養した.培養終了後,酒石酸耐性酸フォスファターゼ染色(TRAP染色)とアルカリフォスファターゼ染色(ALP染色)を施し,破骨細胞と骨芽細胞数を計測した.牛骨片とハイドロキシアパタイト上の細胞を除去した後,走査型電子顕微鏡により生じた吸収窩の個数と面積を測定した.その結果,各試料の破骨細胞数は粗さの有無に関係なく経日的に減少した.しかし,骨芽細胞では粗さにより細胞数の増加がみられた.さらに,牛骨片とハイドロキシアパタイトの吸収窩の測定で粗さによって骨吸収の増加がみられた.以上の結果より,各生体材料の表面性状の違いによって破骨細胞の発育や活性化に影響を及ばすことが示された.
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