研究概要 |
歯科用重合開始ラジカルの細胞障害性を、カンファキノン(CQ)、ベンジル、9-フルオレノンを用いて検討した。歯髄線維芽細胞、歯肉線維芽細胞に対してCQが最も障害性が小さく、9-フルオレノンが最も大きかった。口腔唾液腺癌細胞のHSG細胞でも同様な結果が得られたが、正常細胞に較べ癌細胞はラジカルに対する感受性が著しく大きかった。開始ラジカルのモノマー(triethyleneglycoldimethacrylate)の重合性はCQが最も高かった。CQは優れた開始剤であった。ラジカル捕捉能をフェノール誘導体(ユージノールなどメトキシフェノール類)で調べた。種々のオルト2量体(bis-eugenol,bis-MMP,bis-BHA,bis-BMP)と単量体とを比較した。開始ラジカルを過酸化ベンゾイルで行うと、ラジカル捕捉能は2量体特にBHAの2量体が、ポリマーラジカルとの相互作用は単量体BMP(2-tert-butyl-4-methylphenol)が大きく、構造-活性関係が成立した。2-allyl-4-X-phenolについても検討した。2-allyl-4-methoxyphenolが優れた活性を示した。開始剤ラジカルと抗酸化剤の相互作用は複雑で抗酸化剤によりラジカルが捕捉されても、抗酸化剤自身がラジカルとなり、また細胞膜中では酸素を励起し活性酸素を産生させ細胞障害性を惹起することが明らかになった。
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