研究概要 |
生体安全性の点から生体材料を作製する場合,なるべく生体内に存在する必須元素を用いることが好ましいと考えられる.Ca,P,Zn,SiやMg元素は,生体内にそれぞれ含有されている.本研究は,70kgの体重の人で約18gが含有され,骨の発育する部位に多く含有されているSi元素に着目してCaSiO_3の形でキトサンゾルをゲル化させゲル化材として添加を行った。CaSiO_3の添加重によってpH値,硬化時間,圧縮強さが影響される。CaSiO_3が多くなると,pH値は8以上のアルカリを示し,硬化時間は短くなり,取り扱いにくくなる.また,圧縮強さは大きくなり,必要以上の強さは望むものではなかった.特にpH値は生体にとって必要不可欠な項目である.このpH値を中心に骨補填材を合成し,実験を行った結果,ハイドロキシアパタイト89.5%,CaO4.5%,CaSiO3 6.0%が最も目的にかなった成分配合であることが示唆された.今回の実験は,ハイドロキシアパタイトを主成分とし,CaOとCaSi0_3を含有したキチン・キトサンを結合材とした骨補填材を作製し,粉末量とキチン・キトサンゾル量とが骨形成にどのように影響するのかについてと,骨芽細胞様細胞を用いてDNA量とALPase活性の測定を行った.粉末は,ハイドロキシアパタイト89.5%,CaO 4,5%,CaSiO_3 6.0%の成分で,粉末量0.54g,0.67gと0.80gをそれぞれ合成し,キトサンゾル2.2gと練和して試験片を作製し,実験に供した.その結果,DNA量は粉末量0.54gと0.80gの硬化体の培養2日目に最大値となった.一方,ALPase活性は粉末量0.54gの硬化体の実験開始から12時間後と24時間後に高い値が得られた.以上の結果から,骨補填材として粉末量0.54gが骨の欠損部を早期に回復出来る優れた材料であると考えられた.今後,犬の顎骨に埋入し,生体反応を確認したいと考えている.
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