研究概要 |
平成10年度の研究によって,非接触型血流測定器を用いた場合の口腔内血流測定の条件がほぼ設定できた. 今年度は,磁性アタッチメントが歯肉上皮細胞の増殖に及ぼす影響を検討し,ついで実際に口腔内に磁性アタッチメントを応用した場合、口腔内血流に変化が現れるかどうかについても検討した. ヒト歯肉上皮細胞は,HuMedia-KG_2培養液中で磁石を設置および設置しない条件下で培養後、細胞をメチレンブルーにて染色し,磁場の増殖に及ぼす影響を顕微鏡下で観察した。その結果,歯肉上皮細胞の増殖に影響はなかった.また,培養上清中のIL-8(同細胞より分泌される炎症性サイトカイン)の産生誘導については,培養上清を回収しELISA法により測定したところ,IL-8産生誘導はみられなかった.その結果,磁性アタッチメントによる磁場のヒト歯肉組織に対する安全性が示唆された.さらに,歯肉組織に対して炎症を惹起することもないと考えられる. つぎに,正常有歯顎者の上顎第一大臼歯口蓋側歯頚部より3mmの部位に磁性アタッチメントを添付し,6時間放置後アタッチメントを除去し同部位の血流を測定した.キーパーを付着しない状態では,一旦血流が低下しその後少し上昇した。磁性を帯びていないダミーでは変化が認められなかった。このことから、磁性アタッチメントに用いられている程度の磁束密度では,多少血流は増加するが大きい影響はないといえよう.
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