研究概要 |
金属溶着冠用陶材はガラスマトリックス中にリューサイト(K_2O・Al_2O_3・4SiO_2)結晶が分散した複合体である。リューサイトは26x10^<-6>/℃ときわめて大きな熱膨張係数をもち、ガラス中でのリューサイトの析出量が少量でも全体の熱膨張係数を11.5〜13.5x10^<-6>/℃と約2倍に増大させ、下地金属の値に近づけることができる。出該研究者は、市販品の組成分析、ガラス転移温度の測定や曲げ試験結果、およびリューサイト結晶の合成実験を既に報告してきたが,本研究の最終目的は機械的強度の高い低融ガラスの開発だけでなくリューサイト結晶との組み合わせを考慮することにより、摩耗性を改善し,焼結温度を低温化した溶着冠用陶材を開発することである。本年度は低融ガラスの開発のため,従来型および超低融型の市販品陶材粉末の均質性,結晶相,粒子形態の分析・解析を行った.その結果,市販品陶材粉末は3種あるいは4種の粉末の混合物であり,低融ガラスだけからなる粉末,高融ガラスからなる粉末,リューサイト結晶を含む粉末であった.また,その主成分であるSi,Al,K,Na,OのほかにCaやSbなどの元素が1%以下含まれており,その濃度が粉末により偏在していることがわかった.さらに,X線回折結果より求めたリューサイト結晶の格子定数は各商品によってわずかに異なり,組成が化学量論的なリューサイト結晶組成ではなく,商品により混入している元素に違いがあることが類推された.現在,この添加元素の影響を検討するため,Kの一部を1価の陽イオンであるNa,Rb,Csに,2価のイオンであるCaおよびBa,また3価のイオンであるSbに置換したりリューサイト結晶を作製し,結晶格子定数に与える影響を検討している.さらに,摩耗性を評価するための摩耗試験装置および試料形状を検討中である.
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