研究概要 |
本研究では、まず市販陶材粉末の組成,結晶相,分散状態を検討した.次に,ガラス転移温度を測定し,その微細構造との関連を検討した.さらに,冷却条件が微細構造に与える影響を検討した.このような市販品の物性評価の結果を踏まえ,試作陶材の熱膨張挙動および摩耗挙動を検討した..陶材全体の熱膨張挙動は,リューサイトの600-650℃の相変態よりも,ガラスマトリックス自体の熱膨張挙動が大きく関与していると考えられた.残留応力を大きく残し,機械的強さを向上させるためにはリューサイト周囲に接触するガラスマトリックスのガラス転移温度は650℃以上であることが望ましいと考えられた.Csで安定化した立方晶リューサイトとガラスからなる試作陶材を混合量,粒径とその組成を変化させ,焼成温度,焼成時間と焼成条件を変化させて調製した試作陶材の二軸曲げ強さ,ビッカース硬さ,熱膨張係数の測定を行なった.さらに,試作陶材との回転摩耗によるヒトエナメル質の摩耗量から摩耗速度を算出した.Csで安定化した立方晶リューサイトはガラスと混合し焼成することにより,立法晶リューサイトとガラスとの界面付近で正方晶リューサイトが生成した.立方晶リューサイトの混合量,粒径,焼成温度,焼成時間を変えて作製した試作陶材の蒸留水中での二軸曲げ強さでは,立方晶リューサイト混合量による差は認められなかったが,その粒径が大きくなるにしたがい,また焼成温度が高くなるにしたがい,二軸曲げ強さは小さくなる傾向を示した.焼成時間を変化させたものでは,1分間焼成のものが最も大きい二軸曲げ強さを示した.ビッカース硬さは立方晶リューサイトの粒径が大きいものほど硬くなった.立方晶リューサイトの混合量が増加するにしたがい熱膨張係数は増加した.ヒトエナメル質との摩耗試験を行なった結果,一次摩耗速度は低溶型が他の陶材よりもエナメル質の摩耗速度が大きく,超低溶型と従来型,および試作陶材との間で有意な差が認められた(p<0.01)市販陶材の一次摩耗速度は二軸曲げ強さが大きいほど小さく,正方晶リューサイト粒径が大きくなるほど小さくなる傾向を示した.立方晶リューサイトの添加が摩耗速度に与える影響は少なかった.
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