本研究は目的は顎骨の再建に骨延長を利用することである。平成10年度の研究では、下顎骨の延長により生じる骨形成、および周囲組織の反応を研究することで適切な骨延長の条件を確立することを目標とした。研究方法::SDラット、オス、8週令を使用して下顎骨の加骨延長実験を行った。延長条件は下顎骨体部の骨切りを行った後、創内装置として形成医科工業社製骨延長装置および創外延長装置として自家製装置を装着して1週間の安静を保った。その後1日1mmで5日間の延長を行った(総延長距離5mm)。対照は、骨延長を行わずに骨切り後骨延長装置を装着し、骨延長を行わずに放置した例とした。結果:創内装置装着群骨では延長後1週間目には骨延長装置が皮膚から露出していた。創内装置装着群、創外装置装着群とも延長側、被延長側の舌側に新生骨形成がみられたが骨性の連絡はなかった。骨延長を行わなかった群では舌側での新生骨形成による骨性連絡がみられた。考察:創内装置群で装置が露出した原因として骨延長速度、骨延長距離がラット下顎骨に対しては適切ではなかったためと考えられた。平成10年度の研究では、今回行った骨延長実験により下顎骨の新生骨形成ならびに周囲組織の反応を組織学的、免疫組織化学的、超微細構造学的研究を行うことが可能であることが明らかとなった。現在、骨延長条件を1日0.25mm、総延長距離を3mmとした下顎骨延長研究モデルを確立しており、今後さらに放射線照射後の条件下での研究を行う予定である。
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