ラット下顎骨延長モデルを確立し、放射線照射後の顎骨再建に骨延長法が応用可能か否かについて検討を行った。下顎骨の延長を目的に骨延長器の作製と評価を行ったところ、ラットの下顎骨骨延長には創外型延長期は脱落するため不適切であった。それにたいして、創内型延長器は脱落・感染が少なかった。そのため創内型延長装置を自作して放射線照射群を実験群とし対照を非照射群として研究を行った。放射線照射後の骨延長時期による骨形成の状態を検討するため、照射後2週目と4週目に延長を開始して比較を行った。結果:対照では骨延長後2週目に下顎骨の骨性連絡がみられた。放射線照射後4週目骨延長群では延長後4週目に骨性連絡がみられ骨形成が遅延していることが明らかとなった。放射線照射後2週目骨延長群では骨延長後4週目になっても骨延長部は新生骨による連絡はなく骨延長が低下していることがわかった。下顎骨の骨延長による骨形成様式は対照では骨膜性骨化であった。照射後4週目骨延長群では、骨延長間隙の一部に新生骨形成部に連続した軟骨組織を認めた。照射後4週目骨延長群では骨膜性骨化が主体に骨形成をするが一部では類骨骨化が生じていることが示唆され、対照と比較して放射線照射後に骨延長を行った際の骨形成の様式が異なることが推測された。骨延長法を口腔悪性治療の再建手技として臨床に応用する場合、骨延長後の固定期間を延長するなどの配慮が必要と考えられた。
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