顎関節の病態形成におけるメカニカルストレスの役割に関する生化学的研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10671863
• 研究機関: 九州歯科大学
• 研究代表者: 高橋 哲 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (60226850)
• キーワード: 顎関節症 / メカニカルストレス / 滑液解析 / 炎症性メディエーター / Nitric Oxide / iNOS

研究概要

1.本年度は、Nitric oxideレベルと顎関節内病変、特に滑膜炎、軟骨変性の有無との関係を調べた。その結果、Nitric oxideは滑膜炎の見られる関節でその濃度が上昇している傾向が認められた。また軟骨変性の程度との間には有意な関連が認められた。本研究成果はOral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod.に掲載された。
2.当初の予定だったメカニカルストレスについて、患者でブラキシズムの有る、無しの臨床所見と滑液解析を進める予定であったが、コントロールの採取が大変困難となり、実験の内容を多少変更した。滑液解析以外にnitric oxideが顎関節局所で直接産生されているかを確かめるために、関節鏡視下手術の際に得られ得た滑膜の組織標本を用い、免疫組織学的に検討した。その結果、顎関節症でないコントロールの滑膜ではiNOSの発現はほとんど見られないが、顎関節内障患者で、滑膜炎をもつ患者から採取された滑膜ではいずれも強いiNOSの発現が認められ、少なくともこれらの患者の滑膜ではnitric oxideが産生されていることが明らかになった。iNOSはメカニカルストレスで動くことが知られており、こららの研究成果は顎関節の病態形成に、メカニカルストレスが関与していることを強く示唆する所見として注目される。本研究成果はArchives of Oral Biologyに掲載された。
3.以上のように、顎関節滑液解析のみならず、組織染色によりiNOSの産生が明らかとなり、今後顎関節内障などの病態におけるメカニカルストレスと炎症性マーカーの動態との関連について詳細に検索していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Takahashi T,Kandch T, et al.: "Association between arthroscopic diagnosis of the temporonmandibular joint osteoarthritis and synovial fluid nitric oxide levels."Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radid Endod. 88. 129-136 (1999)
• [文献書誌] Takahashi T,Nagai H, et al.: "Relationship between MR joint effusion, joint pain and protein levels in joint lavage fluid of the patients with internal derangement and osio arthrits of the temporomandionbular joint"J.Oral Maxillofac Surg. 57. 1187-1193 (1999)
• [文献書誌] 高橋哲,永井宏和 他: "Joint effusionを有する顎関節症患者における滑液中の蛋白濃度の上昇"東北大学歯学雑誌. 18. 149-158 (1999)
• [文献書誌] 高橋哲,大谷真紀 他: "顎関節鏡視診断と顎関節滑液中の炎症性メディエーターの比較検討"関節鏡. 25. 127-131 (2000)
• [文献書誌] Hamma H,Takahashi T, et al.: "Immunohistological localization of inducible nitric oxide synthase insynovial tissue of human temporomandibular joint with internal escarpment"Archives of Oral Biology. 46. 93-97 (2001)
• [文献書誌] Takahashi T: "Biochemital changes associted with pathology of the tempromandibular joint : nitric oxide production and inducible nitric oxide synthase expression in temporomandionbular joint disorder"Bulletin of Kanagawa Doutal College. 29(印刷中). (2001)