研究概要 |
歯原性角化嚢胞を対象に、本年度は臨床的事項の検討を行った。まず、最初に歯原性角化嚢胞の発生頻度を検討した。平成6年1月から平成9年12月までの4年間に全身麻酔下に顎骨嚢胞の摘出術を施行した症例190例(嚢胞摘出術を全身麻酔下に行う適応基準は嚢胞がクルミ大以上としている。)のうち、病理組織学的に歯原角化嚢胞と診断された症例は12例であり、発生頻度は6.3%に相当した。次ぎに、上記12例を対象に、臨床的事項を分析した。 1. 性・年齢別分布:男性,8例,女性4例であった。年齢別では70歳台は4例と最も多く、次いで50歳台3例であった。 2. 単発、多発別ならびに部位別:単発例11例、多発例1例であった。下顎骨のみの症例は11例と大部分を占めた。上下顎発生の症例は1例で、本症例は基底細胞母斑症候群が疑われた。 3. X線写真所見:全例、病変の境界は明瞭ないし、比較的明瞭で、一見して良性病変、とくに嚢胞性病変と思われた。単房性7例、多房性5例であった。病変に歯根が関係する症例は9例で、そのうち歯根の圧排、歯根収は各2例みられた。ただし後者は吸収態度がエナメル上皮腫様1例、歯根尖が細く吸収された症例1例であった。病変の大きさとしては4歯以上に亘る大きな症例は7例であった。 4. 処置法:11例に摘出術を施行し、周囲骨を一層、削除した。他の1例には下顎骨部分切除術を施行した。 5. 内容物:記載のある9例中8例はオカラ状、他の1例は乳白色、粘稠性であった。 6. 経過:多房性の1症例にのみ再発がみられ、再手術を施行し、その後の経過は良好である。
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