| 研究概要 |
歯科臨床の場面では基礎歯科医学はもとより臨床歯科医学を統括した問題指向型・問題解決型(Problem Oriented System,POS)の総合的な視点や、治療計画をも含めた総合診断学的な能力が求められる。また近年医療の現場ではインフォームドコンセントに代表されるように、患者-医療者関係の重要性が指摘されている。患者の全人的理解や包括的歯科医療の実践には、歯科医学の専門的知識や先端的技術ばかりではなく、加えて行動科学的なアプローチが必要となってきている。このような背景から今後の歯科医療の充実のためには、卒前臨床教育および卒後歯科臨床研修において、これらの総合診断学的および行動科学的な視点を身につけることが必須と考えられる。本研究の目的は、歯科臨床教育における口腔総合診断学および歯科行動科学の体系化に向けた方向付けを行うことである。
平成12年度は、本研究の一環として患者付き添い体験実習を卒前教育の臨床予備実習に導入することを目的に、歯学部3、4、5年生を対象に施行した。患者付き添い体験実習は、学生が医療の現場を患者とともに体験し、医療者がどのような態度で患者に接しているかを、医療者の卵としてではなく、患者の立場から観察し、学習するものである。本実習は医療者教育における教育目標分類の情意領域の教育に効果的と考えられる。さらに今年度は、学生が自分に不足しているものを自己評価し、自ら問題意識をもち自己学習への動機づけを行った。また臨床予備実習ではアンケートの対象を患者、担当医、学生とし、学生による担当医の態度評価を加えた。その結果、本実習に対して概ね肯定的な回答が得られ、また今後本実習を組織的に継続して実施し、さらに発展・充実させていくために有益な意見を多数得ることができた。
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