補助金交付初年度である本年は、当初の計画に基づき顎関節症における変形性顎関節症のモデルの作製を行った。日本白色種家兎を用いて、関節円板を前方に牽引する術式により円板前方転移の状態を実験的に作製した。以後経時的な観察を行い、変形性顎関節症への移行を組織学的に観察した。その結果、組織学的変化は術後2週より認められ、術後5週では顎関節円板の穿孔、下顎頭及び関節結節における軟骨下骨の露出を伴った変形性顎関節症の発生が認められ、モデルの確立がなされた。 次にこのようにして得られたモデルに対して、実際に臨床的に行われている治療法の効果を検討する目的で、外科療法のひとつである関節円板整位術を二次手術として施行しその後の関節構成組織の変化を観察した。その結果、関節円板整位術を早い時期に施行した実験群では変形性顎関節症の進行は抑制され、正常な関節組織構造の回復が観察され、一方遅い時期に施行した実験群では、変形性顎関節症が進行する所見が観察された。 今後、これらの異なる結果が得られた二次手術の臨界点についてさらに詳細に検討を重ねる予定である。また、変形性顎関節症の進行と抑制を規定する因子の検討ならびに臨床的術式としての関節円板整位術の有用性について実験学的な確証を与えるためのデータの収集を次年度以降継続して行っていく予定である。
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