研究概要 |
初年度にウサギ変形性顎関節症モデルを確立し,顎関節円板の転位が関節円板の破壊と変形性顎関節症進行の要因であることを確認した。第2年度には,このモデルに対して臨床的に行われる関節円板整位術を施行した。その結果,関節円板整位術を早期に行った場合,顎関節構成組織の修復と再生,正常関節機能の保持が観察された。しかし,整位術を一次手術後3週目以降に行ったものでも,変形性顎関節症の進行と関節円板の破壊は二次手術を行わなかった場合と同じであり,関節円板整位術の適応限界が示された。現在,この破壊と修復過程に関する酵素活性の影響について免疫組織化学染色標本による検討を行っている。 また第3年度からは,変形性顎関節症の原因の一つである下顎頭関節突起の外傷に関する実験的検討を行ってきた。週齢の異なるウサギ顎関節突起に転位脱臼骨折を起こし,骨折の程度と年齢が修復に与える影響に対して検討を行った。その結果,幼若期のウサギにおける関節突起骨折は変位の程度に関わらず,顎関節形態はほぼ完全に修復されることが示された。一方,成熟期のウサギでは変位の小さい骨折の場合は,ほぼ完全な修復がみられたが,転位脱臼骨折の場合,修復は不完全で顎関節形態の完全な回復は認めなかった。このことより,臨床で高頻度に遭遇する変位を伴う成人の下顎頭関節突起骨折では,積極的な観血的整復固定術の適用が示唆された。この修復過程における酵素活性の影響に関しても免疫組織化学染色標本を用いて継続して研究を行っていく予定である。
|