研究概要 |
平成10年度は実験対象がマウスである点より、まず手術用顕微鏡下における実験手技の確立が必要であった、即ちできるだけ出血を少なくして顎関節にアプローチすること、下顎頭直下で確実に切除できること、移植耳介の位置が術後移動することなく適切に保たれること、の3点で、実験を始めた頃は、多くの死亡例を出したが、後半は非常に少なくなっている。平成11年2月3日現在まで53匹の成熟雄ICR mouse(顎関節切除+耳介軟骨移植32匹、顎関節切除のみ17匹、顎関節を開放してもとにもどしたもの4匹)について、処置後38日より191日まで観察した所、肉眼的に顔面下顎の変形を生じたり、咬合異常を来たしたマウスはいなかった。 組織学的にH-E染色として検索した所では、うまく標本上に実験部位が出せなかった例もあったが、うまく処置されたマウスでは最長191日でも十分に耳介軟骨は生存機能し、顎関節硬直を生じておらず、この手術形式は十分に臨床的にも応用可能と考えられた。組織学的には手術による外傷性反応性炎症、炎症の消退とともに軟骨細胞の細胞の活性化を生じ、時には本来の軟骨細胞より増殖している様に観察された部分もあった。 移植耳介軟骨と、周囲組織の組織変化、軟骨細胞の変化、さらには切除断端の構成細胞・組織の動態を追求して来ているが、次年度は軟骨細胞の代謝に重要な役割を果たすことが示されている種々のサイトカイン(Transforming growth factor β_1,Insulin like growth factor,basic fibrobrast growth factor,bone morphogenicproteinなど)や組織譜変因子であるlamininなどがどの様に関与しているかを検討したいと考えています。
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