研究概要 |
本年度の研究目的は,ラット脛骨に作製した骨欠損部に我々が開発した各種アパタイトセメント(従来型,迅速効果型,非崩壊型アパタイトセメント)を充填しそれらセメントが血液と接することによる影響を組織学的に検討し,セメントが優れた組織親和性を発現する条件を解明することである. 埋入2週目では,3種類のセメントとも骨欠損部内に充填されているのが確認できたが,従来型に関してはそのセメントの粒子が骨欠損面付近に散在していた.しかしどのセメントの周辺組織にも強い炎症反応は認められなかった. 埋入4週目では,従来型や迅速硬化型では充填されたセメントの一部をを取り囲むように新生骨の増殖が認められるが,骨欠損部表面には一部散らばったセメントを取り囲むように多くの異物巨細胞が認められ強い異物反応を示していた. 埋入8週目では,従来型において依然強い異物反応が残存していたが,骨断端や充填されたセメント内部からセメントを取り囲むように骨新生が認められた.一方,迅速硬化型や非崩壊型ではほとんど異物反応は消失していた.また従来型に認められたセメント内への骨の新生はなく,周りからセメントを取り囲むように新生骨ができていた. これら結果より,各種セメントは生体に埋入しても炎症を強く惹起せず親和性に優れていると考えられた.特に小さな顆粒状として存在する場合でも炎症反応ではなく異物反応が認められた.これはアパタイトが起炎物質にはなりにくいという意見に一致していた.ただ従来型セメントは,血液に触れると硬化しない欠点があり,そのために充填後セメントは一塊にならずその隙間に骨が新生してきたと考えられる.このため逆にセメント内部から骨芽細胞によってセメントを取り囲むように骨への置換が起こりやすくなっているのかもしれない.しかし生体内での安定性からいえば,血液に接触しても崩壊せず,硬化時間の早いセメントの方がよいと考えられる.
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