研究概要 |
シスプラチン(CDDP)は優れた抗腫瘍効果から,固形癌化学療法における重要な抗癌剤であり,口腔悪性腫瘍においても頻用されている.近年,CDDPを含め多くの抗癌剤は,癌細胞にアポトーシスを誘導させることにもより抗癌作用を示すことが明らかにされた.しかし,CDDP耐性腫瘍におけるアポトーシス誘導の抑制機序に関しては不明な点が多いのが現状である.本研究では,ヒト扁平上皮癌細胞株A431細胞(A431/P)より,突然変異誘発法で樹立したA431/CDDP2細胞株(A431/CDDP2)のCDDP耐性細胞株を用いCDDP耐性とアポトーシス誘導機序の解析を行った. 1. CDDP耐性細胞株 A431/CDDP2は,A431/Pに対し2.9倍のCDDP耐性を獲得しており作用機序の異なる他の抗癌剤には交叉耐性を示さず,多剤耐性は獲得していなかった. 2. アポトーシス誘導抑制 アポトーシスの検出は,DNA断片化を2%アガロースゲル電気泳動法で,またDNA断片の定量をELISAで行った.その結果,CDDP処理後A431/PのみにDNA断片化を認めたがA431/CDDP2では認めなかった.ELISAによるDNA断片の定量ではA431/PにおいてDNA断片は経時的に増加するのに対しA431/CDDP2では変化しなかった. 3. アポトーシス関連タンパクの発現検討 CDDP処理後,アポトーシス関連タンパク(p-53,p21,Bcl-2,Bax,Fas)の発現をWestern Blotting法により検出した.その結果A431/CDDP2は,A431/Pに比しBcl-2タンパク発現の明らかな増加を認めるものの他のタンパク発現には変化を認めなかった. 以上の結果よりCDDP耐性A431細胞株におけるCDDP耐性機構にアポトーシス誘導の抑制が認められ,その抑制機構にはBcl.2タンパクが関与する.
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