研究概要 |
シスプラチン(CDDP)は優れた抗腫瘍効果から、固形癌化学療法における重要な抗癌剤であるが腫瘍のCDDPに対する自然耐性、獲得耐性のため臨床的に得られる治療効果には限界がある。申講者らは扁平上皮癌細胞株A431細胞よりCDDP耐性A431細胞株を樹立し、CDDP耐性機序にアポトーシス誘導の抑制が関与していることを既に明らかにした。遺伝子レベルでの検討により得られた結果より、発現に差のあったアポトーシス調節遺伝子Bcl-2を耐性細胞株に遺伝子導入を試みるもその全長の導入が困難であるため,Bcl-2のBH3ドメイン部分のみの遺伝子導入が必要であると考える。 しかしながら,申請者はアポトーシス最終段階に関与するIL-1β転換酵素(IL-1β convertingenzyme:ICE)と呼ばれるシステインブロテアーゼ[ICE/CED-3(Caspase)Family]であるCaspase-3(CPP32)の発現抑制がCDDP耐性機構に関与することも見いだした。 このことは,ICE/CED-3阻害剤であるZ-Asp-2,6-dichlorobenzoxyloxymethylketon(Z-Asp-CH2DCB)処理を行うとCDDP誘導アポトーシスがCDDP感受性細胞において有意に抑制されるがCDDP耐性細胞ではほとんど変化しなかったことにもより明らかとなった。
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