現在、固形癌の化学療法の中心的薬剤となっているシスプラチンがもたらす細胞死を扁平上皮癌細胞KM-1を用いて検討した。これらの細胞をl00uMのシスプラチンで処理し、プロピディウムアイオダイドとローダミン123で染色するとプロピディウムアイオダイドに染色されとローダミン123には染色されない細胞が多いことからこれらの細胞は死細胞であることを確認された。細胞は48時間以内にほとんど死滅した。その細胞形態は膨化している細胞が11.6%、核濃縮を生じた細胞が80%、アポトーシス様細胞が8.4%であった。また、これらの細胞を電気泳動したところ、DNAの断片化はみられず、TdT法を用いてフローサイトメトリーで解析すると、DNAの切断は低頻度の細胞から高頻度の細胞まで広く分散していた。これよりKM-1細胞はDNAの断片化を生じるが、典型的なアポトーシスによる細胞死ではないことが判明した。次にシスプラチンの処理濃度を臨床使用濃度に近い10uMにして細胞死を検討し、またアポトーシスによる細胞死を呈する白血病細胞のHL-60をコントロールとした。細胞死はHL-60では処理後10時間で始まり、典型的なアポトーシスを生じるが、KM-1では遅れて24時間後から始まり、また細胞形態は膨化したものがほとんどであった。これらの細胞をフローサイトメトリーにてFITCの取り込みを測定した結果、FITC量の増加すなわち細胞内蛋白量が増加しており、KM-1は細胞死に際して細胞死に関与する蛋白を産生しているものと考えられた。
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