研究概要 |
口腔癌患者11例をCGHによるDNAのコピー数の異常とレーザースキャンサイトメーターでDNA量を測定し、腫瘍径との関係を検討した。DNAコピー数のGainは染色体上において3q25-28(6/11),5p(6/11),8q(5/11)でみられ、Lossは18q(4/11),19q(4/11),17p(3/11),19p(3/11)に認められた。特に5pの領域は2例において増幅していた。DNA aneploidは6例において認められ、そのDNA indexは1.30-1.82に分布していた。DNAコピー数の異常はDNA diploidよりもDNA anuoloidの腫瘍で強く発現しており、また腫瘍径においてT1の腫瘍に比べてT2以上の腫瘍で有意に多い傾向にあった。このことから、DNA aneuploidと腫瘍の増大は染色体の不安定性を反映していると考えられた。 開発中の抗癌剤KRN5500をヒト白血病細胞HL-60に作用させ、この薬剤の殺細胞効果と分化誘導能を検討した。10nMの低濃度で処理した細胞細胞は72時間後には細胞質に顆粒を有する好中球へ分化した細胞が認められた。しかし、1μM以上の高濃度で処理すると6時間以内に細胞質が凝縮し、核が濃縮したアポトーシス細胞が観察された。アポトーシスは電気泳動でラダー形成により確認され、フローサイトメトリーを用いてDNAの切断時期をTdT法により検討した結果、このKRN5500による細胞死は細胞周期のG1期に生じることが判明した。この抗癌剤を口腔扁平上皮癌細胞に使用したところ、以前に実験したシスプラチンとは異なり明瞭はアポトーシスが誘導されたが、薬剤製造会社の都合により結果を発表することができなかった。
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