研究概要 |
CGHで14種の口腔扁平上皮癌細胞と11例の口腔癌においてDNAコピー数の異常を検索した。培養細胞は患者の腫瘍細胞よりもDNAコピー数の異常が多い傾向にあった。この原因として、培養細胞が培養過程で生体と異なった環境に順応するためにDNAコピー数を変化させる必要があるのではないかと考えられた。両者の共通した染色体異常領域はGeinが5p,8q,5q、一方Lossは18q、19pであり、この領域の異常が口腔癌において癌化や腫瘍の増殖などに関与していることが示唆された。またDNAコピー数の異常はDNAdiploidよりもDNA anuoloidの腫瘍で強く発現しており、また腫瘍径で分類すると進行した腫瘍で有意に多い傾向にあった。このことから、DNA aneuploidと腫瘍の増大は染色体の不安定性を反映していると考えられた。 抗癌剤シスプラチンによる口腔扁平上皮癌KM-1の細胞死を検討した。細胞は濃度依存的に死滅するが典型的なアポトーシス細胞の形態は呈さず、またDNAの切断も少なかった。しかし、ヒト白血病細胞のHL-60では短時間で明瞭なアポトーシスが認められたことから、KM-1細胞はアポトーシスを生じにくいことが考えられたが、開発中の抗癌剤KRN5500ではHL-60と同様に典型的なアポトーシスが誘導されるため、シスプラチンは扁平上皮癌に対しアポトーシスを誘導しにくいのではないかと思われた。その原因としてシスプラチンはDNAに結合するため、アポトーシス誘導に必要な蛋白が合成されないか、もしくはシスプラチンが蛋白と結合してアポトーシスのシグナルが阻害されているとが推察された。
|