実験動物をラットから猫に変更して実験を再出発させた。刺激に対する血圧変動から麻酔剤のネンブタール使用量30mg/Kgとした。この投与量以上では麻酔が深くなり刺激に対する循環反応は血圧下降でなく血圧上昇反応を来す。刺激電流については血圧変動と電流値は負の相関がみられ、C繊維の興奮をもたらす最小電流値は0.5mA以下でよいことが判明した。この結果、刺激条件については10Hz以上、10秒間、0.3mAが最適な条件で、三叉神経への侵害刺激に対する血圧下降反応条件を確立することができた。浅い麻酔条件では副交感神経系が優位になっているために血圧は下降すると考えられた。深い麻酔状態では交感神経系が優位なために昇圧反応が全面にでると考えた。 ネンブタール麻酔では中枢神経内での神経伝達物質GABAが増強されるが、GABA antagonistの投与では昇圧反応をみることができなかった。伝達物質ではさらにL-glutamateの関与については検討が必要であった。また三叉神経の循環反射に対するネットワーク解析については孤束核(NTS)、吻側延髄腹外側野(C1、RVML)、尾側延髄外側野(A1、CVLM)の関係を明らかにすることが必要である。なぜなら、従来の文献では三叉神経刺激は副交感神経系の興奮により除脈を、交感神経系の興奮で血圧下降が生じるとされている。NTSの関与は否定され三叉神経系と副交感神経系に直接経路がないとすれば網様体(RF)と上記のRVML、CVLMの役割が重要となる。これらは圧受容体反射と似ており、今後はこれらのネットワークをトレーサ実験や遮断実験で解明する予定である。
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