1.転写因子NF-κBの抑制因子の一つであるIκB-αのうち、外界からの刺激によっても分解を受けない変異型IκB-αcDNAを導入した不死化ヒト唾液腺細胞クローン(ACMT-6とACMT-7)とempty vectorのみを導入した細胞クローン(ACpRc-1)を樹立した。これら細胞クローンを抗癌剤である5-Fluorouracil(5-FU)にて処理したところ、ACMT-6とACMT-7においてはACpRc-1に比較して60-75%の増殖能を示すことが明らかとなった。すなわちNF-κB活性の抑制が細胞増殖抑制につながることが明らかとなった。(投稿中)。 2.ヒト唾液腺癌細胞株であるcl-1細胞を2μg/mlの5-FUにて経時的に処理することにより以下の結果を得た。すなわちMTT法にて生細胞数を測定したところ、5-FU処理4日目で55%の抑制を示した。Gel shift assayでの解析よりNF-κB活性の抑制が認められた。なおWestern blotにてp65蛋白の核外移行とIκB-α蛋白の発現増強がみられたが、RT-PCRでの解析においてはp65mRNAとIκB-αmRNA発現には変化はみられなかった。Caspase-8活性は処理48時間後1.7倍の上昇を示した。以上の結果より5-FUの抗癌作用機構にNF-κB活性の抑制が関与している可能性が示唆された。
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