前年度(平成10年度)は自動デコンボジション筋電図法(ADEMG)を主に無症候被験者(コントロール群)に応用して運動単位活動電位の大きさのパラメーターおよびその発火パターンを調査したが、本年度(平成11年度)は同様な方法で筋・筋膜痛患者のデータを採取した。また正常者の表面筋電図の極性変換点(ターン)および平均振幅を採取し、高次関数による直線あるいは曲線回帰を試みた。さらに筋・筋膜痛の病因が中枢性であることを確認するため、正常者と筋・筋膜痛患者両者に対する虚血疼痛試験の実施およびその前後の筋疼痛閾値を測定した。 これらの結果、運動単位活動電位の発火頻度と動員される運動単位活動電位の大きさを示すパラメーターとして、ターン回数および1ターンあたりの平均振幅が有効であり、すべての収縮力で本法は運動単位の動態を類推することが可能であり、収縮レベルを変数とする関数に、発火頻度が三次関数および動員される運動単位活動電位の大きさが一次関数に関数変換可能であることを示した。また、正常者と筋・筋膜痛患者の30%最大筋収縮力の運動単位をADEMGで検討し、筋・筋膜痛患者には明らかなミオパチーを示す所見は認められなかったことを証明した。さらに正常者と筋・筋膜痛患者両者に虚血疼痛試験を実施し前後の筋疼痛閾値を測定し、筋・筋膜痛の病態がミオパチーが主因ではなく、むしろ下行性疼痛抑制系の機能不全であることを示した。
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