口腔および顔面を支配する三叉神経一次求心性線維の三叉神経知覚核群における中枢投射について検討した。神経のトレーサーとして、有髄神経線維に特異的に取り込まれるCB-HRP(cholera toxin B conjugated to horseradish peroxidase)と、無髄神経線維に特異的に取り込まれるIB4-HRP(isolectin B4 conjugated to horseradish peroxidase)を用いた。 実験動物としてラットを用いた。平成10年度は眼窩下神経と舌神経に関して、平成11年度および12年度は下歯槽神経などの他の三叉神経について、上記各トレーサーを注入して、それぞれの中枢投射に関して検索した。 検索の結果、CB-HRPでラベルされた中枢終末は、尾側核ではI層、II層の内側、III、IV、V層に認められ、IB4-HRPではII層の外側に限局して認められ、いずれも体部位局在的に認められた。主知覚核、吻側核、中間核ではCB-HRPによるラベルは体部位局在的にそれぞれ認められ、IB4-HRPによるラベルでは、舌神経に注入した場合にはわずかに認められたが、眼窩下神経およびその他の神経に注入した場合には認められなかった。これらのことから、舌神経に含まれる無髄神経線維は、三叉神経知覚核群のより吻側部位の核にも投射していることが明らかとなり、口腔領域の痛みに関して、これら吻側部位の核も尾側核と同様に関与していることが推測された。
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