研究概要 |
口腔扁平上皮癌において、頚部リンパ節転移の有無は予後に非常に大きな影響を持つことは周知の事実である。特に頚部後発転位(潜在性転位)の早期発見と診断精度の向上は、比較的早期の口腔癌の治療成績の改善に大きな役割を果たす。特に口腔癌のなかでも半数以上を示す舌癌について、現在予後と関連が示唆されている血管内皮増殖因子(VEGF)やE-adherin、Flt-4、Ki-67について、免疫組織学的に検討しその予測因子について検討した。なお、免疫組織学的染色はホルマリン固定パラフィン包埋切片によるABC法およびSAB法を用いた。34例のstage l,ll症例のうち、8例に一次治療終了後、3ヶ月から2年において8例(23.5%)に頚部後発リンパ節転移が認められた。上記各因子について免疫組織学的にはその発現様式と後発転移との関連について検討しみると、VEGFの発現強度とは有意ではなかったが、後発転移と関連がある傾向に示した(p=0.0845)。また、Flt-4の免疫組織学的発現は有意に後発転移症例に高く認めれらた(p=0.0083)。しかし、Ki-67,E-cadherinの発現との関連性は明らかではなかった(E-cadherin : p=0.8091,Ki-67 : p=0.8218)。Flt-4はリンパ管内皮に主に発現することから、血管新生に加えて、リンパ管新生の状態がより頚部後発リンパ節転移に関連するものと考えられた。
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