研究概要 |
脳内神経系の細胞体部位と神経終末の双方に同時にマイクロダイアリシスプローブを稙入するデュアルプローブマイクロダイアリシスを用いて,無麻酔・無拘束・自由行動状態の実験動物にストレスを負荷した際の脳内ノルアドレナリン活動の変動を検討した.実験動物にWistarラットを用い,ニューラルネットワークの観点からノルアドレナリンニューロンの投射経路を吟味,検討した結果,マイクロダイアリシスプローブを青斑核(以下LC)と神経終末部位の大脳皮質前頭前野(以下PFC)に稙入した.LCは,ノルアドレナリン神経の細胞体が存在し,その神経投射は全脳から脊髄に及び,機能的に最も集約した脳部位の一つとして知られている部位であり,PFCは,不安,恐怖などの情動発現,認知などに重要な役割をもつことが報告され,向精神薬の作用発現部位の一つとしても注目されている脳部位である.稙入24時間以降にLC側のprobeから各種agonist,antagonistとベンゾジアゼピン系薬を持続灌流投与して,ハンドリングストレスを負荷し,PFC側のprobeから回収した灌流液から,PFCノルアドレナリン細胞外(シナプス間隙)量を計測した. その結果,ストレス負荷により,PFCノルアドレナリン細胞外量は負荷前の約170%にまで増加した.α_2antagonistは,ストレスによるPFCノルアドレナリン細胞外量増加をさらに亢進し,GABA_Aagonistは増加を抑制した.べンゾジアゼピン系薬としてミダゾラムをLCへ持続灌流した場合も,GABAAagonistと同様にPFCノルアドレナリン細胞外量の増加は抑制された. 以上から,LC細胞体上に存在するこれらの受容体を介した,ストレス時のLC-PFCノルアドレナリン神経活動の制御機構の存在が示唆され,べンゾジアゼピン系薬の作用発現の-の機構が明らかとなった.
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