研究概要 |
口腔癌の治療には、放射線治療が多用され、すぐれた治療成績をもたらしているが、一方では正常組織にも容易に放射線障害を引き起こす。近年、長期生存例の増加にともない晩期顎骨障害が問題視され、臨床的にもその治療に苦慮するケースにしばしば遭遇し、放射線による顎骨骨壊死のメカニズム解明と予防法の確立は臨床上有意義なことと考えた。そこで、骨系細胞に対する放射線の影響について、線量増加による生細胞率の変化と、DNA量、ALP活性、LDH逸脱率の変動について検討を行った。また、放射線によるDNA鎖切断率についても検討を行った。 (実験方法)マウス骨髄由来の骨芽細胞様細胞KUSAを用い、96ウェルのマイクロプレートに5×10^3個づつ播種し、24時間培養後、1〜100Gyの線量を照射、48時間培養後の生細胞率をMTTassay法を用いて測定した。同時に、DNA量、ALP活性値、LDH逸脱率を測定した。また、放射線照射48時間後のDNAを採取し、DNAの二重鎖残存率をEthidium bromideによる蛍光法にて測定した。(結果)放射線照射による生細胞率は、非照射を100%とするとIGyでは60.1%、5Gyで44.8%、25Gyで37.2%、100Gyで34.4%であった。DNA量は、非照射では20.7μg/ml、1Gyで18.6μg/ml、5Gyで13.4μg/ml、25Gyで10.5μg/ml、100Gyで9.3μg/mlであり、LDH逸脱率は非照射では8.9%、1Gyで10.5%、5Gyで10.8%、25Gyで14.5%、100Gyでは18.9%で、DNA量とLDH逸脱率の間には負の相関が認められた。ALP活性については線量による変化は認めなかった。DNA鎖の切断率は非照射を100%とするとIGyで77,9%、5Gyで76.1%、25Gyで66.3%と線量増加にともなうDNA切断率の増加が認められた。
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