研究概要 |
口腔癌の放射線治療にともなう顎骨障害のメカニズムを解明するため,マウス骨髄由来の骨芽細胞様細胞KUSAを用い,放射線照射によるDNA鎖切断パターンをアガロース電気泳動法を用いて解析した。KUSA細胞のDNA鎖切断像は1〜100Gyのいずれの放射線量においても一重鎖の非特異的な切断像を示すスメアーな像を呈し,マウス胸腺細胞のDNA鎖切断像にみられる約200bpのヌクレオソーム単位の切断像とはあきらかに異なっていた。さらに放射線骨障害に対する予防的薬剤投与法を検討するために,各種骨粗鬆症治療薬のうちカルシウムの負の平衡の改善,骨の代謝回転の改善のために臨床的に使用されているVitaminD3,骨吸収抑制作用,破骨細胞形成抑制作用,PGE2抑制作用をもつIpriflavone,加齢にともなう腰痛症,更年期障害に効果のある漢方製剤八味地黄丸を用いてKUSA細胞の放射線照射による細胞死抑制効果について検討を行った。VitaminD3とIpriflavoneは20μM以上になると細胞増殖阻害を示すため実験には20μMの濃度を使用した。また,八味地黄丸は5mg/mlで細胞増殖阻害がみられるが,代謝拮抗剤などの細胞毒性の強い薬剤と併用すると最も効果的に細胞増殖阻害を抑制することから5mg/mlの濃度を用いた。薬剤投与時期は,放射線照射時同時投与が最も生細胞率を回復させるため同時投与とし,放射線量は1Gy,5Gyで検討を行った。その結果,薬剤未投与をコントロールとして%of controlであらわすと,VitaminD3では1Gydで101.8%,5Gyで123.1%,Ipriflavoneでは1Gyで117.0%,5Gyで126.1%,八味地黄丸では1Gyで89.3%,5Gyで97.5%と各薬剤ともに照射線量が増加するほど生細率を改善させた。また併用投与ではVitaminD3と八味地黄丸に併用効果が認められた。
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