口腔癌の治療には、機能温存の目的で放射線療法が選択されることも多く、すぐれた治療成績をもたらしているが、長期生存例の増加とともに正常組織への影響、とくに晩期顎骨障害が問題視されるようになってきた。、臨床的にもその治療に苦慮するケースにしばしば遭遇するため、放射線障害に対する予防的薬剤投与法を確立することは臨床上有意義なことと考えた。そこで、臨床的に使用されている骨粗鬆症治療薬のうち、放射線照射による骨系細胞の細胞死抑制効果の認められたVitamin D3、Ipriflavoneおよび漢方製剤八味地黄丸を用いて放射線照射による細胞死の質的検討をおこなった。実験には5-bromo-2′-deoxy-uridine(BrdU)をラベルしたDNA断片を検出するenzyme immunoassayをCellular DNA Fragmenntation ELISA(BOEHRINGER MANNHEIM社製)を用いておこなった。 (実験方法)BrdUでラベルしたマウス骨髄由来の骨芽細胞様細胞KUSAを、96ウェルのマイクロプレートに5×10^3個づつ播種し、24時間培養後、放射線を照射(1Gy、5Gy)あるいは薬剤を投与し24、48、72時間培養後、抗DNA抗体でコーティングした96ウェルのマイクロプレートに移して、室温で90分間インキュベートした後上清と細胞に分け、TMBで発色させ450nmの吸光度を測定した。 (結果)放射線照射によるDNAの断片化は、いずれの放射線量でも上清中に検出される断片化DNAの量が細胞質内のものを上まわっていることから膜破壊をともなう細胞死と判定された。Vitamin D3はいずれの照射線量でも培養上清中の断片化DNA量が多いが、Ipriflavoneでは5Gy照射時に投与した場合細胞質内断片化DNA量が優位となった。また八味地黄丸では細胞質内断片化DNA量が優位で、Vitamin D3、Ipriflavoneと併用投与した場合にもすべて膜破壊をともなわないアポトーシス様細胞死となることが観察された。
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