マウス骨髄由来骨芽細胞様細胞(KUSA)を用いて顎骨における放射線骨壊死発現メカニズムの解析をおこなった。またその予防的薬剤投与法についても検討をおこなった。 1.骨芽細胞様細胞に対する放射線の影響 放射線照射による骨芽細胞様細胞の生細胞率は、照射線量の増加にともなうDNA量の減少と相関が認められた。またDNA鎖の切断率をethidium bromideによる蛍光法で測定すると、線量増加にともなってDNA鎖切断率は増加した。DNAの断片化をBrdU標識によるenzyme immunoassayで調べると培養上清中のDNA断片が時間依存性に増加し、細胞膜の破壊をともなう細胞死であることがわかった。さらにアガロースゲル電気泳動法によりDNA切断パターンを解析すると、いずれの照射線量においても一重鎖の非特異的な切断を示すスメアーな像を呈した。以上のことから、放射線照射による骨芽細胞の非特異的なDNA鎖切断にともなう細胞死が、顎骨における放射線骨壊死の本体であることが示唆された。 2.骨芽細胞様細胞の細胞死に対する骨組鬆症薬の効果 Ipriflavoneは単独投与でも生細胞率増大作用が強く、Vitamin D_3は八味地黄丸と併用投与することによりIpriflavoneと同等の生細胞率の増大が認められた。DNAの断片化については、八味地黄丸はいずれの照射線量に対しても膜破壊をともなわないアポトーシス様細胞死であった。Ipriflavoneは照射線量5Gyで膜破壊をともなわない細胞死を示した。Vitamin D_3はいずれの照射線量でも膜破壊をともなう細胞死であった。以上によりIpriflavoneの単独投与またはVitamin D_3と八味地黄丸の併用投与が放射線骨壊死に対して有効と思われた。
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