研究概要 |
BMPは骨原芽細胞を刺激し,骨芽細胞への分化を促進し,骨芽細胞など細胞の分化や細胞外基質タンパクの合成に関して中心的な役割を果たしているものと考えられる。そこでin situ hybridization(ISH)と免疫組織化学を用いて,骨組織の再生過程における(1)BMP-2,-4,-6,TGF-β1,-2,-3,(2)TGF-β superfamily receptorの遺伝子発現と局在(3)細胞外マトリックスの遺伝子発現を検出し,骨組織再生の遺伝子カスケードを検索した。 材料には体重約200gのWistar系ラットを用いる。下顎角部に欠損を形成した。他の実験モデルとして,第1臼歯の抜歯を行い,抜歯窩における骨の再生過程も観察する1,2,4,5,7,14日に4%paraformaldehyde溶液を用いて左心室より灌流固定を行った。組織をEDTAで脱灰し,パラフィン切片とした。 ISHはLigand(BMP-2,-6,TGF-β1),Recptor(BMP receptor type IA,IB,II,TGF-β receptor type I,-II),細胞外マトリックス(collagen,fibronectin osteonectin,BSP)のcDNAを用いて,Dig標識anti-sense鎖およびsennse鎖RNA probeを作製し,hybridizationを行った。免疫組織化学では細胞外マトリックス:抗ウシBSP抗体,抗マウスcollagen抗体などを使用してABC反応を行った。 BMP-2の遺伝子は骨折あるいは抜歯後2日目,-6は3日目に強く発現した。光顕ISHではBMPR-IB mRNAのsignalは1日目の破骨細胞および線維芽細胞様細胞に発現した。抜歯後2日目では線維芽細胞にsignalが現した。抜歯後3日目ではsignalは新生骨梁付近の骨芽細胞やその周囲の線維芽細胞に発現,4日目以後では抜歯窩内のsignalは極めて弱く,ほとんど観察することは出来なかった。電顕ISHでは抜歯後5日目以後でも骨芽細胞や線維芽細胞のsignal認められた。BMPは骨折や抜歯窩の治癒過程の初期段階では新生骨や線維形成を促進するほかに骨形成に先行して骨吸収を促進するものと考えられた。
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