研究概要 |
過去5年間(1993年〜1997年)に日本歯科大学新潟歯学部付属病院第2口腔外科を初診来院し,治療を行った口腔扁平上皮癌患者59例について,生検時標本を抗CD31モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行うことにより腫瘍血管新生と遠隔臓器転移との関連について検討した.遠隔臓器転移は59例中7例(11.9%)に認めた.7例の内訳は,口底T1症例1例,舌T2症例1例,T3症例2例,下顎歯肉T3症例1例,上顎歯肉T3症例1例,T4症例1例であった.腫瘍血管新生は抗CD31モノクローナル抗体による免疫組織化学染色で,血管内皮細胞を検出し,基底細胞層相当部に接する血管と腫瘍胞巣間に介在する血管を同一部位のH-E染色標本と対比しながら,100倍率の視野で血管分布密度として算出した.その結果,遠隔臓器転移を認めた症例では,遠隔臓器転移がなかった症例にくらべ,血管分布密度が有意に高値を示し(p<0.005),遠隔臓器転移の予測因子として有用であることがわかり,平成11年10月の第44回日本口腔外科学会総会(東京都江東区,東京国際展示場)において報告した. 血管新生抑制性蛋白Angiostatinについて,これまで様々な方法で血清中の濃度の測定を試みたが,プラスミノーゲンのレベルが高く,困難であった.そこで,現在は,尿中のAngiostatinの測定と腫瘍摘出組織でのAngiostatinの局在の確認を試みており,尿中の血管新生抑制性蛋白と免疫組織学染色による腫瘍の血管新生や遠隔臓器転移との関連について検討し,報告する予定である.なお,尿については,当初より凍結保存してある検体があり,さらに検体数を加え測定を試みている.
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