研究概要 |
I.マウスLewis肺癌細胞(AHHYG-1)を用い,腫瘍に対する機械的圧迫刺激と炭酸ガスレーザーおよびNd-YAGレーザー減量術の血液中癌細胞及び肺転移に対する影響を,ヒグロマイシン耐性遺伝子(HYGR)導入癌細胞を用いて検討した.癌細胞の検出にはHYGRを指標としたnestedprimer PCR法を用いた.【結果及び考察】癌細胞を接種してから2,3週目に圧迫刺激,レーザー減量術を加えたところ,血液中癌細胞の陽性率は増加を示した.しかし肉眼的肺転移結節を計測したところ,転移数の有意な増加は認められなかった.一方,A11HYG-1癌細胞の実験的肺転移の形成効率を検討した結果,転移効率は0.1%以下であった.これらのことから悪性腫瘍の手術操作時には血液中に癌細胞の散布が起こるが,必ずしも転移には結びつかないことが明らかとなった.この結果より本実験系においてはレーザー照射は転移促進,抑制に関わることはないものと考えられた。 II.レーザー照射の影響をリンパ節転移から捉えることを目的とし,平成9年よりF344ラットにおいて4NQO誘発舌扁平上皮癌からの細胞株を作成を試み、親株から血行性+リンパ行性転移能を有するRSC3LM株,血行転移性のRSC3E2R株,非転移性のRSC3E2株を分離した.各細胞の性質は足蹠部(f.p.)接種ではLM株,E2R株ともに膝窩リンパ節転移を認めたが,下腹部皮下接種ではLM株のみ鼠径リンパ節転移を認めた.標識細胞のf.p.接種では3時間後に全ての細胞で下腿部集合リンパ管,膝窩リンパ節に陽性像を認めた.またLM株は他の細胞と比べ高い遊走能と活性型MMP2の発現を認めた.以上よりf.p.接穂による膝窩リンパ節転移はリンパ管内接種に類似した実験的リンパ節転移であり,自然リンパ節転移の原発巣におけるリンパ管内進入過程には遊走能及び活性化MMP2等が関与している可能性が示唆された.このモデルにてレーザーの影響を検討したが,本系においてはレーザー照射群と対照群(自然転移群)との間に転移数の有意な差は認められなかった。
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