研究概要 |
1. 病理組織学的,免疫組織学的悪性度評価の検討: (1) 癌治療は生物学的悪性度に応じて行うことが重要であり,細胞接着や遊走能に関与すると考えられているCD9が,悪性度評価のマーカーとなりうるかを検討した.AMeX固定された口腔扁平上皮癌組織を用いて,LSAB法による免疫生化学的にCD9の発現を検索し,悪性度評価を行った.その結果,CD9は,正常上皮では基底膜を除く基底細胞から有棘細胞における細胞間隙に局在していたが,癌組織では91.4%で,各胞巣の基底層から傍基底層にかけてCD9の発現の減弱あるいは欠如が認められた.これはウェスタンブロッティングにおいても確認された,さらにCD9の発現欠損例では有意に高頻度に頚部リンパ節転移をきたし,予後不良であり,悪性度の評価に極めて有用なマーカーになりうると考えられた(Cancer Research投稿中). (2) excisional biopsyによる最小侵襲治療には術中迅速診断は不可欠であり,本法の精度,信頼性について永久標本と比較し検討した.その結果,術中迅速診断は軽度の異形成上皮の判定は困難であるが,分化度や浸潤様式では永久標本に劣らない精度を有していると考えられた. 2. 臨床的悪性度評価:前記の組織学的悪性度を反映した臨床病態を正確に捉える上で,非侵襲性で簡便な超音波診断は有用と考えられる.そこで,7.5MHzマイクロプローブを用いて超音波診断と病理組織所見と比較し検討した.その結果,超音波所見は病理組織所見をよく反映しており,超音波診断により腫瘍深達度,浸潤様式の評価が可能であり,正確な悪性度評価が可能なことが示唆された.
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