1.研究目的:本年度の研究では、小児における歯髄の生死診断に際し電気刺激などの侵襲的な刺激を用いない方法の開発のため、小児の歯髄から透過光光電脈波Transmitted Light Photoplethysmography(TLP)を記録するのに適した装置を開発し、これによって得られた脈波振幅の計測を行い、ラバーダム装着や室内の明るさなどの測定条件の影響を検索した。 2.研究方法:今年度は測定装置を改良し、LEDピーク波長を緑色(565nm)から高輝度青緑色(525nm)に、受光センサーをCdSeからCdSに変更した。この試作器を用いて小児被験者(健全永久歯12歯、健全乳歯6歯)でTLPの測定を試みた。記録は室内灯有り、無し、およびラバーダム装着有り、無しの場合に分けて行ない、歯周組織脈波の混入の影響を確認した。また成人被験者において、局所麻酔前後でのTLP振幅の変化をも観察した。TLP信号は後で平均加算し、脈波振幅は信号処理装置PowerLabを使用して求めた。 3.研究結果:1)小児の被験者の健全歯からも成人と同様、指尖脈波に同期したTLPが検出された。小児の被験歯(特に幼若永久歯および乳歯)では成人と比較してTLPの脈波振幅は大きく波形も明瞭であった。2)電気刺激に反応しなかった外傷脱臼歯でわずかにTLPは記録され、生活歯であることが確認できた症例もあった。再植歯では明瞭な波形は検出されなかった。3)室内灯の有る時には、脈波振幅は増大するが、被験者の体動の影響が混入しやすかった。4)ラバーダム装着の有無により信号の有意な減少は生じなかったため、歯周組織の脈波は混入していないと思われた。5)局所麻酔によりTLP振幅が変化することから、TLPは歯髄の血流を反映してると思われた。 今年度の研究結果では、電気診では判定しにくい外傷を受けた幼若な永久歯や低年齢小児の乳歯であっても、本法を用いて歯髄脈波を検出することによって、歯髄の生死が判定できることが明らかとなった。
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